## 安定した集客が期待できる“異業態”M&A外食大手がM&A(企業の買収・合併)を駆使して業容を拡大している。レストランチェーンがうどん業態を、牛丼チェーンがラーメン業態を買収など、同じ外食の中でも“異業態”のM&Aが多いのが最近の傾向だ。単品業態ではメニューがヒットして拡大している際は強いが、いったんブームが去ると業態が「一本足」では失速してしまうことになる。違う業態を取り入れることで、安定した集客につながる面が強い。## すかいらーくホールディングス(3197)が「資さん」を買収2024年の最大の話題はファミリーレストラン「ガスト」などを運営するすかいらーくホールディングス(3197)が、10月に「資さんうどん」チェーンを運営する「資さん」の全株式を240億円で買収したことだった。資さんうどんは、出汁や柔らかめな麺にこだわったうどんが特徴で、「ごぼ天うどん」などが人気。1976年の創業で北九州を地盤に全国に計80店舗を運営し、売上高153億円(2024年8月期)の企業。後継者がおらず、投資ファンドのユニゾン・キャピタルが大半の株式を取得していた。業績は順調に推移している。すかいらーくホールディングスはガストのほか、中華の「バーミヤン」、和食の「夢庵」など自社ブランドを育成して売上高を伸ばしてきた。グループの総店舗数は約3000店におよぶ、ファミレス業態の最大手企業だ。グループにこれまでなかったうどん業態を取り入れるメリットがある。2024年10月に千葉・八千代市に関東初店舗をオープン、2025年2月に東京都・両国にも出店したが、いずれも人気店となっている。資さんうどんはうどんのほか、カレーライス、カツ丼などその他のメニューも豊富。また北海道産の小豆100%使用の「ぼた餅」も名物だ。外食ではランチとディナータイムの間をアイドルタイム(待機時間)呼び、集客が課題だった。例えば和食業態の夢庵で「ぼた餅」を提供すればシナジーが見込まれるかもしれない。また、不振業態を資さんうどんに転換することで、売上高の回復も見込める。## ラーメン事業を強化する吉野家ホールディングス(9861)一方、牛丼チェーンの老舗で業界大手の吉野家ホールディングス(9861)はラーメン事業を強化している。同社は2016年に煮干しスープの「せたが屋」(東京都)、2025年には鳥白湯ラーメン、台湾まぜそばなどの「キラメキノ未来」(京都府)などを買収してきた。中計ではさらなるラーメン業態のM&Aも示唆している。牛丼チェーンは全国に1200店舗超に達し出店余地が限られてきている中で、ラーメンの成長で全体の売り上げ増を狙う。また、報道では客単価1000円前後と牛丼やうどんよりも高めに設定できる点も魅力になっているようだ。## 複数業態を展開する外食関連銘柄をピックアップ### すかいらーくホールディングス(3197)ファミリーレストランで国内首位。当初は店舗名も「すかいらーく」で、その後は徐々に低価格が軸の「ガスト」に転換。中華の「バーミヤン」、和食の「藍屋」など幅広く展開。しゃぶしゃぶ「しゃぶ葉」、中価格帯ファミレス「ジョナサン」も同社のブランド。異業態「資さんうどん」の買収で、一段の業容拡大やシナジー効果を狙う。【図表1】すかいらーくホールディングス(3197):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)### 吉野家ホールディングス(9861)牛丼チェーンのパイオニア。「吉野家」は国内だけでなく、中国や米国、インドネシアなど海外にも積極展開している。2004年に讃岐うどんの「はなまる」と資本業務提携し、2012年に完全子会社化。ラーメン業態は国内外で少しずつ強化していたが、中期経営計画で一気に主力業態への拡大を狙う。2030年3月期の総売上高3000億円、営業利益150億円を掲げているが、このうちラーメン事業で売上高400億円、店舗数500店(前期比4倍)を見込んでいる。【図表2】吉野家ホールディングス(9861):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)### ワタミ(7522)居酒屋「鳥メロ」などを展開。宅配食サービスが収益の柱。2024年10月にサンドイッチ世界チェーンの米サブウェイと日本でフランチャイズチェーン(FC)展開を始めると発表。10年間で国内の店舗数を当時の2倍の430店舗以上に広げるという。日本法人の日本サブウェイ合同会社を買収し子会社化。国内7ヶ所に530ヘクタールの規模で農業・酪農を行うワタミファームで生産された食材を活用している。長期的には約3000店舗と国内外食首位級を目指すという。【図表3】ワタミ(7522):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)### トリドールホールディングス(3397)セルフサービス方式の低価格うどん店「丸亀製麺」が主力。創業者の粟田社長が、焼き鳥居酒屋「トリドール三番館」をオープン。讃岐うどんの将来性などを背景にうどん店主軸に業態転換している。傘下にコッペパン「焼きたてコッペ製パン」、ラーメン「ずんどう屋」など小麦粉を使った企業多数。立ち飲み居酒屋「晩杯屋」も同社が買収。100円台のつまみが充実し、お酒も低価格で提供。一人で気軽に呑める店を目指す。現在約50店舗体制。インバウンド客にも人気。【図表4】トリドールホールディングス(3397):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)### ゼンショーホールディングス(7550)牛丼の「すき家」、回転寿司の「はま寿司」などをチェーン展開する外食の最大手企業。ファミレス「ココス」、牛丼「なか卯」、パスタの「ジョリーパスタ」など数多くのブランドを有する。複数のスーパーマーケットも運営するなど総合力が高い。2023年4月にはハンバーガーチェーンの「ロッテリア」を買収。人気商品「絶品チーズバーガー」「エビバーガー」などを継承し、買収後には高級感あるバーガーなどを提供する「ゼッテリア」も出店。【図表5】ゼンショーホールディングス(7550):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)
【日本株】外食大手は“異業態”M&Aで業容拡大 | 和島英樹の発掘!注目株 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
安定した集客が期待できる“異業態”M&A
外食大手がM&A(企業の買収・合併)を駆使して業容を拡大している。レストランチェーンがうどん業態を、牛丼チェーンがラーメン業態を買収など、同じ外食の中でも“異業態”のM&Aが多いのが最近の傾向だ。
単品業態ではメニューがヒットして拡大している際は強いが、いったんブームが去ると業態が「一本足」では失速してしまうことになる。違う業態を取り入れることで、安定した集客につながる面が強い。
すかいらーくホールディングス(3197)が「資さん」を買収
2024年の最大の話題はファミリーレストラン「ガスト」などを運営するすかいらーくホールディングス(3197)が、10月に「資さんうどん」チェーンを運営する「資さん」の全株式を240億円で買収したことだった。
資さんうどんは、出汁や柔らかめな麺にこだわったうどんが特徴で、「ごぼ天うどん」などが人気。1976年の創業で北九州を地盤に全国に計80店舗を運営し、売上高153億円(2024年8月期)の企業。後継者がおらず、投資ファンドのユニゾン・キャピタルが大半の株式を取得していた。業績は順調に推移している。
すかいらーくホールディングスはガストのほか、中華の「バーミヤン」、和食の「夢庵」など自社ブランドを育成して売上高を伸ばしてきた。グループの総店舗数は約3000店におよぶ、ファミレス業態の最大手企業だ。グループにこれまでなかったうどん業態を取り入れるメリットがある。2024年10月に千葉・八千代市に関東初店舗をオープン、2025年2月に東京都・両国にも出店したが、いずれも人気店となっている。
資さんうどんはうどんのほか、カレーライス、カツ丼などその他のメニューも豊富。また北海道産の小豆100%使用の「ぼた餅」も名物だ。外食ではランチとディナータイムの間をアイドルタイム(待機時間)呼び、集客が課題だった。例えば和食業態の夢庵で「ぼた餅」を提供すればシナジーが見込まれるかもしれない。また、不振業態を資さんうどんに転換することで、売上高の回復も見込める。
ラーメン事業を強化する吉野家ホールディングス(9861)
一方、牛丼チェーンの老舗で業界大手の吉野家ホールディングス(9861)はラーメン事業を強化している。同社は2016年に煮干しスープの「せたが屋」(東京都)、2025年には鳥白湯ラーメン、台湾まぜそばなどの「キラメキノ未来」(京都府)などを買収してきた。中計ではさらなるラーメン業態のM&Aも示唆している。
牛丼チェーンは全国に1200店舗超に達し出店余地が限られてきている中で、ラーメンの成長で全体の売り上げ増を狙う。また、報道では客単価1000円前後と牛丼やうどんよりも高めに設定できる点も魅力になっているようだ。
複数業態を展開する外食関連銘柄をピックアップ
すかいらーくホールディングス(3197)
ファミリーレストランで国内首位。当初は店舗名も「すかいらーく」で、その後は徐々に低価格が軸の「ガスト」に転換。中華の「バーミヤン」、和食の「藍屋」など幅広く展開。しゃぶしゃぶ「しゃぶ葉」、中価格帯ファミレス「ジョナサン」も同社のブランド。異業態「資さんうどん」の買収で、一段の業容拡大やシナジー効果を狙う。
【図表1】すかいらーくホールディングス(3197):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)
吉野家ホールディングス(9861)
牛丼チェーンのパイオニア。「吉野家」は国内だけでなく、中国や米国、インドネシアなど海外にも積極展開している。2004年に讃岐うどんの「はなまる」と資本業務提携し、2012年に完全子会社化。ラーメン業態は国内外で少しずつ強化していたが、中期経営計画で一気に主力業態への拡大を狙う。2030年3月期の総売上高3000億円、営業利益150億円を掲げているが、このうちラーメン事業で売上高400億円、店舗数500店(前期比4倍)を見込んでいる。
【図表2】吉野家ホールディングス(9861):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)
ワタミ(7522)
居酒屋「鳥メロ」などを展開。宅配食サービスが収益の柱。2024年10月にサンドイッチ世界チェーンの米サブウェイと日本でフランチャイズチェーン(FC)展開を始めると発表。10年間で国内の店舗数を当時の2倍の430店舗以上に広げるという。日本法人の日本サブウェイ合同会社を買収し子会社化。国内7ヶ所に530ヘクタールの規模で農業・酪農を行うワタミファームで生産された食材を活用している。長期的には約3000店舗と国内外食首位級を目指すという。
【図表3】ワタミ(7522):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)
トリドールホールディングス(3397)
セルフサービス方式の低価格うどん店「丸亀製麺」が主力。創業者の粟田社長が、焼き鳥居酒屋「トリドール三番館」をオープン。讃岐うどんの将来性などを背景にうどん店主軸に業態転換している。傘下にコッペパン「焼きたてコッペ製パン」、ラーメン「ずんどう屋」など小麦粉を使った企業多数。立ち飲み居酒屋「晩杯屋」も同社が買収。100円台のつまみが充実し、お酒も低価格で提供。一人で気軽に呑める店を目指す。現在約50店舗体制。インバウンド客にも人気。
【図表4】トリドールホールディングス(3397):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)
ゼンショーホールディングス(7550)
牛丼の「すき家」、回転寿司の「はま寿司」などをチェーン展開する外食の最大手企業。ファミレス「ココス」、牛丼「なか卯」、パスタの「ジョリーパスタ」など数多くのブランドを有する。複数のスーパーマーケットも運営するなど総合力が高い。2023年4月にはハンバーガーチェーンの「ロッテリア」を買収。人気商品「絶品チーズバーガー」「エビバーガー」などを継承し、買収後には高級感あるバーガーなどを提供する「ゼッテリア」も出店。
【図表5】ゼンショーホールディングス(7550):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年6月19日時点)