## 年初来高値を大きく上回ってきたユーロ/円米ドル/円が、年初来高値(158円)を大きく下回る水準での推移が続いているのに対し、ユーロ/円など一部のクロス円は最近にかけて年初来高値を更新してきた(図表1参照)。ではその背景は何か、そしてこの上昇(円安)はまだ続くかについて考えてみる。【図表1】ユーロ/円の週足チャート(2024年1月~)出所:マネックストレーダーFXユーロ/円の上昇は、6月に入ってから加速した。ただしその動きは日独金利差(ユーロ優位・円劣位)からは大きくかい離したものだった(図表2参照)。ではなぜ金利差から大きくかい離してユーロ高・円安が広がったのか。1つ考えられるのは、6月に入り年初来の高値を大きくブレークしたことで勢い付いたということではないか。【図表2】ユーロ/円と日独2年債利回り差(2025年4月~)出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成このような上昇加速により、ユーロ/円は52週MA(移動平均線、6月13日現在162.6円)を大きく上回ってきた(図表3参照)。ユーロ/円は先週まで3週連続で52週MAを上回った。またユーロ/円は一時167円以上に上昇したが、167円以上の水準は、52週MAを3%近く上回ることになる。ではこのようなユーロ/円の上昇はまだ続くのだろうか。【図表3】ユーロ/円と52週MA(2000年~)出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成## 52週MAとの関係は下落トレンドの中の一時的上昇を示唆=ユーロ/円ユーロ/円は、2024年7月から急落に転じると52週MAを大きく、長く本格的に割り込んだ。これは、2020年から約4年続いたユーロ/円の上昇トレンドの中では初めての現象で、トレンド自体が上昇から下落に転換した可能性を示すものだった。ユーロ/円は、2025年2月に、2024年8月以来となる155円割れまで下落した。ではそうした動きの中で、ユーロ/円の下落トレンドは1年も過ぎない中で早々に終了し、再び上昇トレンドに戻ったということは果たしてあるだろうか。米ドル/円の場合でも、普通1つのトレンドは2~3年続くものであり、1年未満で終わるのは極めて例外的だ。そう考えると、ユーロ/円は依然として下落トレンドが続いており、それと逆行する最近にかけての上昇はあくまで一時的な動きに過ぎない可能性があるだろう。複数年続くトレンドと逆行する一時的な動きの特徴は、過去の経験を見ると52週MAを大きく長くブレークしない程度にとどまるということ。最も「ダマシ」の少ない米ドル/円の経験を参考にすると、下落トレンドが続く中での一時的な上昇は最大でも1ヶ月以上52週MAを上回らず、そして52週MAを5%以上上回らない程度にとどまる可能性が高かった(図表4参照)。【図表4】米ドル/円と52週MA(2000年~)出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成## 目一杯上昇も170円は微妙?=6月末頃までに52週MA割れもこの米ドル/円の経験則をユーロ/円に当てはめて考えてみる。ユーロ/円は先週まで3週連続で52週MAを上回った。ただそうした上昇が、あくまで下落トレンドの中の一時的な動きに過ぎず、すでに見てきた米ドル/円の経験のように基本的に1ヶ月以上続く可能性が低いなら、6月末前後までには52週MA以下の水準まで戻る可能性が高いとの見通しになる。一時的な上昇は、最大でも52週MAを5%以上上回らない程度にとどまるという経験則をユーロ/円に当てはめると、足下で52週MAが162円半ばなので、それを5%上回る水準、170円まで上昇するかは微妙との計算になる。金利差からかい離したユーロ/円上昇の背景としては、トランプ政権への不信感を受けた米ドルの信認低下、その一方で欧州株の大幅な上昇などが示す欧州への資金還流などがあるのかもしれない。ただし、これまで見てきた52週MAとの関係などからすると、ユーロ高・円安の動きは分岐点を迎えつつある可能性もあるのではないか。
【為替】ユーロ高・円安は転換が近いのか | 吉田恒の為替デイリー | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
年初来高値を大きく上回ってきたユーロ/円
米ドル/円が、年初来高値(158円)を大きく下回る水準での推移が続いているのに対し、ユーロ/円など一部のクロス円は最近にかけて年初来高値を更新してきた(図表1参照)。ではその背景は何か、そしてこの上昇(円安)はまだ続くかについて考えてみる。
【図表1】ユーロ/円の週足チャート(2024年1月~)
出所:マネックストレーダーFX
ユーロ/円の上昇は、6月に入ってから加速した。ただしその動きは日独金利差(ユーロ優位・円劣位)からは大きくかい離したものだった(図表2参照)。ではなぜ金利差から大きくかい離してユーロ高・円安が広がったのか。1つ考えられるのは、6月に入り年初来の高値を大きくブレークしたことで勢い付いたということではないか。
【図表2】ユーロ/円と日独2年債利回り差(2025年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
このような上昇加速により、ユーロ/円は52週MA(移動平均線、6月13日現在162.6円)を大きく上回ってきた(図表3参照)。ユーロ/円は先週まで3週連続で52週MAを上回った。またユーロ/円は一時167円以上に上昇したが、167円以上の水準は、52週MAを3%近く上回ることになる。ではこのようなユーロ/円の上昇はまだ続くのだろうか。
【図表3】ユーロ/円と52週MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
52週MAとの関係は下落トレンドの中の一時的上昇を示唆=ユーロ/円
ユーロ/円は、2024年7月から急落に転じると52週MAを大きく、長く本格的に割り込んだ。これは、2020年から約4年続いたユーロ/円の上昇トレンドの中では初めての現象で、トレンド自体が上昇から下落に転換した可能性を示すものだった。
ユーロ/円は、2025年2月に、2024年8月以来となる155円割れまで下落した。ではそうした動きの中で、ユーロ/円の下落トレンドは1年も過ぎない中で早々に終了し、再び上昇トレンドに戻ったということは果たしてあるだろうか。
米ドル/円の場合でも、普通1つのトレンドは2~3年続くものであり、1年未満で終わるのは極めて例外的だ。そう考えると、ユーロ/円は依然として下落トレンドが続いており、それと逆行する最近にかけての上昇はあくまで一時的な動きに過ぎない可能性があるだろう。
複数年続くトレンドと逆行する一時的な動きの特徴は、過去の経験を見ると52週MAを大きく長くブレークしない程度にとどまるということ。最も「ダマシ」の少ない米ドル/円の経験を参考にすると、下落トレンドが続く中での一時的な上昇は最大でも1ヶ月以上52週MAを上回らず、そして52週MAを5%以上上回らない程度にとどまる可能性が高かった(図表4参照)。
【図表4】米ドル/円と52週MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
目一杯上昇も170円は微妙?=6月末頃までに52週MA割れも
この米ドル/円の経験則をユーロ/円に当てはめて考えてみる。ユーロ/円は先週まで3週連続で52週MAを上回った。ただそうした上昇が、あくまで下落トレンドの中の一時的な動きに過ぎず、すでに見てきた米ドル/円の経験のように基本的に1ヶ月以上続く可能性が低いなら、6月末前後までには52週MA以下の水準まで戻る可能性が高いとの見通しになる。
一時的な上昇は、最大でも52週MAを5%以上上回らない程度にとどまるという経験則をユーロ/円に当てはめると、足下で52週MAが162円半ばなので、それを5%上回る水準、170円まで上昇するかは微妙との計算になる。
金利差からかい離したユーロ/円上昇の背景としては、トランプ政権への不信感を受けた米ドルの信認低下、その一方で欧州株の大幅な上昇などが示す欧州への資金還流などがあるのかもしれない。ただし、これまで見てきた52週MAとの関係などからすると、ユーロ高・円安の動きは分岐点を迎えつつある可能性もあるのではないか。