「みんなの銀行」はなぜ、ステーブルコインに取り組むのか──銀行口座を“Web2ウォレット”と呼ぶデジタルバンクの挑戦【永吉頭取インタビュー】 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

「みんなの銀行」はなぜ、ステーブルコインに取り組むのか──銀行口座を“Web2ウォレット”と呼ぶデジタルバンクの挑戦【永吉頭取インタビュー】

日本初のデジタルバンクを標榜する「みんなの銀行」は、日本最大規模の地域金融グループ「ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)」のイノベーティブな姿勢と取り組みを象徴する存在だ。最近では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が新たに構築するデジタルバンクの基幹システムに、みんなの銀行のフルクラウド型銀行システムが採用され、話題を呼んだ。

FFGはその名のとおり九州を基盤としているが、みんなの銀行のユーザーは首都圏を中心に全国に広がり、ユーザーの約70%はデジタルネイティブ世代が占めている。

〈記者発表資料より〉みんなの銀行は7月4日、第二創業期として「みんなの銀行 2.0」と名付けた取り組みを発表。BaaSビジネスの強化を打ち出し、その1つの可能性として、Solana Japan、Fireblocks、TISと「ステーブルコインおよびWeb3ウォレットの事業化に向けた共同検討」を開始した。

代表取締役 頭取の永吉健一氏に「みんなの銀行 2.0」におけるステーブルコイン、Web3ウォレットの位置づけ、今後の展開などを聞いた。

銀行口座は「Web2ウォレット」

──ステーブルコイン、Web3ウォレットの取り組みはいつ頃からスタートさせたのか。

永吉氏:「みんなの銀行」のミッションは、あらゆる価値を仲介すること。銀行とは「金融仲介業」であり、金融とは法定通貨、日本では日本円だ。日本円を仲介することが従来の銀行ビジネスだとすると、この先は日本円だけではなく、「価値のあるもの」を仲介するプラットフォームになっていくと考えている。

当然そのときには、暗号資産のように、法定通貨ではないが価値を持っていて、広く展開されているものも入ってくる。立ち上げのときから、そうした構想をミッションとして描いていた。

Web3やステーブルコインを担うチームを具体的に作ったのは2024年4月。それまでは組織横断的なプロジェクトとして進めてきた。

──「みんなの銀行 2.0」の中で、Web3ウォレットやステーブルコインは将来的なBaaSのメニューの中で提供していくという理解で良いのか。

永吉氏:今後、どのようなユースケースが登場するかによるだろう。デジタルの仕組みと現在のリアルな仕組みの「壁」を超えて、2つをどう滑らかに繋げていくか。「価値の仲介」は、当行のミッションなので、そこに取り組んでいきたい。

ただし、さまざまな資産が「デジタル資産」に変わっていかないと繋ぐことはできない。NFT、セキュリティ・トークン(デジタル証券)をはじめ、今後、トークン化された資産が増え、本格化してくると、それらを繋ぐためのハブのようなものや決済手段となるステーブルコイン、そしてトークン化された資産を保有・管理するためのWeb3ウォレットが必要になってくる。

我々は銀行口座を「Web2ウォレット」と位置づけており、Web2ウォレットである銀行口座とWeb3ウォレットをどれだけシームレスに提供できるか、スムースなユーザー体験を設計できるかがきわめて重要なフェーズにようやく入ってきた。

また、我々が想定している預金債権型ステーブルコインは、預金と表裏一体であり、移転できるウォレットが自行もしくは提携事業者のKYC済みウォレットのみだったり、万一の際に預金保険の保護対象になっているなど、安心・安全に使っていただけるという観点でニーズがあると考えている。

アメリカではトランプ大統領が就任してからステーブルコインの動きが一気に加速している。実際にどこまで進むのか、アマゾンやウォルマートがどういう使い方を想定しているのか、あるいはクレジットカード会社も今後、手数料ビジネスが成立しなくなる可能性があるため、ステーブルコインに積極的な動きを見せており、注目している。

──銀行口座は「Web2ウォレット」とのことだが、Web3/ブロックチェーンの世界でもようやくウォレットに焦点があたるようになってきたと感じている。

永吉氏:Web3ウォレットの現状の使い勝手の悪さを何とか解消したい。まだアイデアに過ぎないが「みんなの銀行」アプリのトップ画面にあるボタンをクリックしたら、Web3ウォレットに早変わりするぐらいの世界観を作りたいし、普通預金がドラック・アンド・ドロップでステーブルコインに換えられるくらいの簡単さを作っていきたい。

10億ポイントが流通する地域ポイントの手触り感

──今日発表したステーブルコインとWeb3ウォレットの共同検討は、どれくらいのタイムスケジュールを想定しているのか。

永吉氏:半年ぐらいで、発行の可能性は明らかにしていきたい。ステーブルコインの実証実験はすでに2023年にJapan Open Chain上で行っており、フィージビリティも確認している。今回はソラナ、Fireblocks、TISとの組み合わせで検証する。

ウォレットも、2019年4月に同じふくおかフィナンシャルグループ傘下のiBankマーケティングがハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)を基盤としたマネーアプリ「Wallet+(ウォレットプラス)」をリリースし、地域ポイントサービスの提供を開始している。その意味では、ブロックチェーンにはかなり早くから取り組んできた。

「Wallet+」は現在11の地方銀行が参加しており、すでに10億ポイントが流通している。ユーザーにとっては、裏側のシステムがブロックチェーンかどうかは関係ないが、我々はブロックチェーンの手触り感や、ブロックチェーンにできることは掴めていると自認している。

──今回、ブロックチェーンとしてソラナを選択した理由は。

永吉氏:一番の理由はグローバルのレイヤー1チェーンで見たときに、さまざまなところで使われていること。トランザクションスピードも相当に早く、決済領域で広く使えるチェーンになっている。海外はもちろん、国内の事業者ともアライアンスを組んで取り組みを進めている。

ステーブルコインの発行はおそらく可能だと考えている。発行は可能だが、どう使っていくか。つまりユースケース開発に彼らのグローバルでの知見や国内プレイヤーとの関係性を活用できればと期待している。

現状の口座間決済にはないステーブルコインの可能性

──ステーブルコインの議論では必ず「ユースケースは何か?」という話が出る。クロスボーダー決済、企業間決済の可能性があげられているが、例えば、企業間決済は現状でも十分スムーズかつ低コストで可能になるのでは。

永吉氏:決済コストを考えると、我々が提供するBaaSでのA2A決済(パートナー企業とみんなの銀行のシステムをAPIで直接つなぐ決済)では、銀行口座と直結した決済サービスが可能になるので事実上コストゼロになる。つまり、地域通貨のような考え方や決済コストに注目すると「ステーブルコインの役割とは?」となってしまう。

だが、一方でステーブルコインならではのメリット、つまりプログラマブルだったり、スマートコントラクトの仕組みを持っていることを組み合わせると現状の口座間決済では不可能な、いわゆる条件執行付きの決済、例えば、買い手が商品を受け取ったら、代金が売り手に着金するというようなエスクロー決済が可能になると考えている。

そうしたユースケースが生まれ、ニーズが生まれてくれば、KYC済みウォレット間の移転で、預金と同等の保険制度を備えたステーブルコインを銀行の1つの機能として提供できる。広い意味でBaaSソリューションの1つになる。

みんなの銀行は、C向けビジネスを展開していると思われているが、BaaSの提供を皮切りにB2B2Bにチャレンジしていく。つまり、ステーブルコインの個人での流通だけではなく、企業間決済の可能性もあり、ソラナを含めた今回の座組みの中でどのようなユースケースが生まれるのか楽しみにしている。

BaaS、さらにはステーブルコインで何ができるのかに我々はチャレンジしているし、タイミング良く、アメリカでは一気にステーブルコイン関連の動きが進んでおり、ユニークなユースケースが登場するのではないかと注視している。

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